『西方の魔女』東方視察編:12 [『西方の魔女』]
お待たせしました。
『西方の魔女』東方視察編本編の更新です。実は・・・最終章だったりします(爆)。
ええ、やっとお終いですよ。まぁ、番外編とかはありますけどね?
一応の終幕はつくのですが・・・一応、原作の流れを踏破しつつも、この後の中央進出編ではかな~り原作を逸脱するような気が・・・
まぁ、この作品を読んでくださっている皆様は、その辺はあまり気にされていないかな?
Web拍手は、ちょこちょこと頂いていますが、今のところお叱りのメッセージもないことですし・・・
それでは、興味のある方は例の如く、続きを読むからどうぞ♪
この視察もなかなか楽しい 『余興』 ではあったし
『収穫』 としても、まずまずの結果が得られたんじゃないかな?
『収穫』 としても、まずまずの結果が得られたんじゃないかな?
『西方の魔女』東方視察編 第十二章
See You Again
See You Again
視察の最終日、イシス・ハミルトン中将は副官のトリヴァー中佐のみを伴い、松葉杖をつきながら司令部の方へと顔を出した。
その際に彼女は、あとの三人は迎えの車に荷物を積んだり色々と忙しいから挨拶には来れないが、その点は見逃してやってくれ、と・・・ロイの方へ歩み寄りながらそう告げると、意味ありげな微笑をその口許に浮かべた。
すると、その後方で「書類を出してきます。」と言う声が上がり、一人の気配が消えた。
その気配を特に気に掛けた素振りも見せず、彼女は改めてロイに向うと、今度こそ邪気のない笑顔を浮かべ右手を差し出してきた。
「今回の視察では、君には随分と世話をかけたね、マスタング大佐? ――― 総合的に見れば、指揮官としての君の能力は十分評価に値する。まぁ、君の様な軍人が増えるのは、平和ボケした今の上層部には必要な刺激になるだろうから、これからも頑張れよ。」
「恐縮です。イシス中将もどうかお元気で。」
差し出された右手を握り返しながら『イシス中将』と・・・そう、初めて呼びかけたロイに対して、呼んだ本人と呼ばれた当の本人以外の面々が、驚いた様な複雑な表情を浮かべた。
「う~ん・・・初めの印象が悪かった割には、結構最後は君も点数を稼せいだと思うな。ああ、それとね・・・」
ロイとの初対面での遣り取りを思い出したらしい彼女が、そう言って笑いながら、ちょいちょいと、ロイに向って自分の方へ屈む様に合図を送ってきた。
「・・・何でしょうか、中将?」
ロイは何事かと思いつつも、内緒話をする様に声を潜めたイシスの方へと身を屈めると、その口許に耳を傾ける様にして顔を寄せた。
「・・・酒の席での発言には、充分注意しろよ。私としては、次に君に会う時も・・・君と同じ陣営に居たいからな?」
ロイは耳元で囁かれたその忠告の色を含んだイシスの声音に、酒宴の後半には記憶が飛んでいた自分は、一体彼女に対して、どんな言動をとっていたのか?と、思わず口許を強張らせた。
すると、その強張った表情を見せるロイに気付いた相手が、今度は悪戯を思い付いたこどもの様な笑みを浮かべ・・・
次の瞬間、ロイは自分の頬に感じた柔らかな感触に驚いて思わず後退りながら、その触れられた頬がカッと熱くなるのを意識し目を見開く。
「・・・ちゅ、中将!?」
「まぁ、照れるなよ、大佐。慣れてるだろう、こんな事?」
ロイの頬に触れる程度のキスを落としていったイシスは、ロイの反応にそう言ってクスクスと笑いながらウインクして見せると、ヒラヒラと手を振りながら踵を返した。そして、如何にも付け足すかの様に言葉を継ぐ。
「 ――― マスタング大佐。いずれ君も、上を目指して中央の一角に切り込んで行くつもりなら、言動にはもう少し注意する事だ。あと、上官との酒の席ではもっと上手く立ち回れよ、大佐。」
イシスは、酒の席とは云え『いずれは大総統の座まで登りつめてみせる』と、そう公言していた相手にエールを贈ると、車までお送りしましょう、と慌てた様に後を追おうとしたロイを片手で制し「止めておいた方がいい。中尉が仕事を持って待ってるよ?」と、笑顔で釘を刺した。
その間、始終無言でイシスとロイの遣り取りを見守っていたトリヴァー中佐が、そこではじめて上官であるロイには敬礼で、また自分と同じ様に副官を務めるホークアイの敬礼には微かな頷きで応えると、イシスの後につづく。
やがて司令室の戸口に差しかかったイシス・ハミルトン中将は、ふと足を止めると肩越しに何故だか憂いを含んだ眼差しでロイを一瞥した。そして・・・
「また会おう、マスタング大佐。」
ふわり、と柔らかな笑みと共に彼女は最後にそう言い残すと、無言のままの副官を伴って東方司令部を後にした。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
「ああ、ハボック少尉。色々と案内をありがとう。」
「どう致しまして、ハミルトン中将。」
東方司令部を後にすべく、迎えの車に乗り込もうとしていたイシスに手を貸していたハボックは、公式な挨拶を述べる叔母に向って、同様に儀礼的な挨拶を返した。
途端に車に乗り込んだイシスの表情に、やや不満気な色が浮かぶ。しかしそれも一瞬の事で、次の瞬間にはイシスの口許に柔らかな笑みが浮かび・・・彼女は何かを思いついた様子でハボックに向かって手招きをしてみせた。
そして彼女は、まだ他に何かあっただろうか? と、云った様子でイシスの方へと屈み込んだハボックの頬に手を遣ると ―――
「頑張れよ、ジャン♪」
耳元で囁く様にして贈られたイシスからのエールに、ハボックは思わず笑みを零した。そして自分の唇に、最後にそっと私的な挨拶を残していった相手に、きちんとした敬礼で以って応える。
「はい、イシス・・・中将もどうか、お気をつけて。」
周囲の目を気にしたハボックの最後の挨拶に、イシス・ハミルトン中将は微かに頷いてから極上の笑みを浮べると、車を出すようにと部下に合図を送った。
こうして、二週間にわたるイシス・ハミルトン中将の東方司令部に於ける視察は幕を下ろした。
しかし、やがてこの視察が決して無事終了した訳ではない事を、彼女はそれからおよそ一ヵ月近くに亘る期間、身を以って知る事となる。
その際、いつの世も男の嫉妬ほど見苦しいモノはない、と ――― 直属の部下三人は半ば呆れながらも、どうやら全ての部署への移動手段として、松葉杖を使わせて貰えないでいるらしい敬愛すべき上司の苦々しげな表情と、逆に自棄に機嫌の良さそうな副官とを毎日の様に目にしながら、視察の後始末に奔走する事になった。
そして ―――
「ああ『ダイヤ』かい?『ハート』だよ。お前、あの事を知ってて、私を東方の視察になんか駆り出したんだろう? ――― 惚けるな。でなきゃ、わざわざジャンの様子を伺いに行かせる為だけの目的と云う訳でもあるまい? ―――分かってる・・・確かに『アレ』は結構使える人材だ。この『私』が掛け値なしで合格点を遣ってもいい。けどね・・・報告書にも書いたあの襲撃は間違いなく軍絡みだ ――― そう、手際が良すぎた。あっちにしてみれば、私達の存在そのものがイレギュラーだったんだろうけどね。お前はソレすら計算済みだったんだろう? ねぇ、クリス。」
中央司令部大総統府内に於いて、尤も中枢に近い場所に位置すると目される『ダイヤ』に向かって、イシス・ハミルトン中将 ―― 即ち『ハート』―― は、電話越しに親しげにそう愛称で呼びかけた。
しかしその口許には、見る者を凍りつかせる様な酷薄な笑みが浮かび、言葉の端々には電話の向こうに居る相手への、明らかな『棘』が含まれていた。
「そろそろ、中央でも動きがあるのだろう? ――― いいや、私ではダメだ。第一、こちらの国境付近での紛争をどうにか収めない限り安心はできない。それまでは、私が中央に戻るのは得策じゃぁない。ああ、勿論いずれは『キング』から、しかも直々に私にお呼びがかかるだろうって事は十分承知しているよ。でもね・・・今はまだその時期じゃないし、才気溢れる人材ならうち‐西方‐以外にも、お前のお気に入りも含めて他所にも埋もれているだろう? その方面で先に手を打っておく方がいい・・・ああ、それからでも遅くはないよ ――― じゃあ、また連絡してくれ。」
彼女は用件を終え受話器を置くと、大きく息を吐きながらドサリと椅子の背に身を投げ出した。
「・・・そう、まだ早い・・・第一、私にとってはそんな事態にならない方がいいんだ。だって私は・・・」
イシスは今は遠く離れた場所に居る、彼女にとっては『甥』や『J』、そして側近でもある部下達と云った存在とはまた別格の『特別な相手』に思いを馳せると、憂いを含んだ翠瞳を片手で覆う様にして閉ざした。そして目蓋の奥に浮かんだその残像の、彼女だけには見せていた表情に ――― 何故だか無性に泣きたくなった。
――― そう、叶うならば彼女は『 』と敵対する事だけは・・・それだけは避けたかった。
しかしもし仮に今後、自分と『 』とが敵対するような事態になれば勿論のこと、彼女は躊躇いなく『 』と対峙するだけの覚悟は出来ていた。
そしてその時、隣りに居るであろう『僚友』を思い、彼女はその口許に穏やかな微笑を刻む。
ああ、そうとも。私は必ずまた『君』と出会う事になるだろう ――― それもきっと、そう遠くはない未来に、だ。
『西方の魔女』東方視察編 第十二章 ~ See You Again ~ 終
2004.11.24. 脱稿 2005.02.15. 改稿
『西方の魔女』~ 東方視察編 ~ END.NEXT EPISODE ~ 中央進出編 ~ COMING SOON!
『あとがき』と云う名の言い訳
お、終わった...!
はい ・ ・ ・ これで漸く 『西方の魔女』 シリーズ本編は、終わりになります。
まぁ、厭くまでも一応 ・ ・ ・ ですが。
――― な、長かった。
はじめは5~6編で終了する予定で書き出したのに、気が付けば枝葉が伸びてこんな事にっ!?
しかもコレ、パソコンがネットに接続できない! 壊れたの!? と、焦りまくっていた時期に設定を考えはじめ、その後、下書き混じりのメモを書き溜めた結果、どうにか出来あがった様なシリーズです。
勿論、華月なりの私的設定をふんだんに盛り込んで、これでもかと云うほど色々と人間関係を捏造しましたとも!!
その結果、唯一西方の面々に翻弄されなかったのは、フュリー曹長ぐらいじゃないですか?
それでさえ、華月はソール中尉との絡みを考えていたのですが ・ ・ ・ ヘインズ少尉に邪魔されました(笑)。
( ああ、そう云えばファルマン准尉もそんなに被害は受けてませんでしたね? )
その上、はじめはイシスとその 『甥』 であるハボック少尉との絡みばかり考えていたはずなのに、気が付けば最後の方では大佐との絡みの方が多くなっている!! これって一体どういうこと!? ・ ・ ・ な状態です。おかしい(汗)。
さて、イシス・ハミルトン中将、と云う女性-ひと-は、実は設定を作った華月にとっても謎の多いキャラでした。
イシスは 『不老』 に近い外見を持ち、それ故にその周囲を取り巻く人間にとっては、羨望の的でもある訳ですが、その代償として彼女は沢山の大切な 『モノ』 を失っています。
本編ではその辺の事情にはあまり触れていませんが、各章のタイトル前文には、そのヒントとなるようなイシスの心情がモノローグとなって随所に隠されています。
そして、イシスの未だに隠されたままの 『秘密』 やそれに伴う 『苦悩』 については、これからも番外編の中で書かれる事になっていきますが、正直言ってかなりシビアです。そのため、華月はイシスを幸せにしてあげたいのですが ・ ・ ・ その割には結構過酷な 『運命』 を用意してるよね(汗)?
さて、これからの 『西方の魔女』 の行方ですが ・ ・ ・ このエピソードを東方視察編、としましたように実は、中央進出編なんて云うモノを考えています。しかも、私的設定が入りまくりますので ――― 今でも充分そうですが ――― 『鋼の錬金術師』 の世界観を借りたまったくの別物語 ・ ・ ・ になっていくと思われます。
それでも、お付き合い頂けるモノが書けるよう、精一杯精進していきますので、どうかこれからもお付き合い下さい♪
因みにタイトルである 『西方の魔女』 は、勿論 『イシス・ハミルトン』 を指している訳ですが、どうして彼女が 『魔女』 なのか ・ ・ ・ それは、皆様のご想像にお任せします♪
ああっ、実は考えてなかったんだろう、華月!! と云う指摘が聞こえてきそうですが ・ ・ ・ ええ、貴女、それが正解ですとも!!( >威張るな、莫迦! )
・・・と、まぁ冗談はさておき ――― なんだかやっぱり続いてしまうらしい(汗) ――― 次回 『西方の魔女』 中央進出編にて、またお会いしましょう!!
『西方の魔女』 東方視察編 完 2005.04.26.
と、云う『あとがき』をつけて当初、CD-ROM企画を作っていた華月ですが、あまり需要がないようなので、この後につづく中央視察編については殆ど白紙状態です(汗)。←や、メモ程度ならあるんですよ?
だって、需要のないものを供給しつづけても、辛くなるのは供給者のほうで・・・はっきり言って、切羽詰りました!
え~と、宜しければ、Web拍手のメッセージで結構ですので、反応が欲しいかなぁ~?と...それによっては、この続きもアップできると思ったり。
まぁ、そんなこんなで・・・一応終幕でいいよね?
http://webclap.simplecgi.com/clap.php?id=isisu
2008-05-01 01:01
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